今月の献立 〈第28回〉 2013年 4月 |
第28回の大阪料理会。日本の伝統行事、地域の伝承的な食を基本に据えながら今様の前菜料理への提案。さらには各テーマ食材においては、それぞれの料理人が自ら調理にもテーマを設定して臨んだ料理会となった。弧柳の松尾氏は、鯛を使って「熟成」をテーマにした料理を。柏屋の松尾氏は筍と蛍烏賊を使って「細かくする」という調理法からの発見をテーマに取り組んだ。 |
松尾 英明さん 千里山 柏屋 |
松尾 慎太郎さん 北新地 弧柳 |
松尾 英明さんの献立 | 松尾 慎太郎さんの献立 | 撮影/藤澤 了 文/笹井良隆 |
【総評】 前菜料理の「端午の頃」。完成度が極めて高く細やかな仕事への賞賛の声が多く聞かれた。中でも粽の繊細な処理には、具体的な手法などが質問の中心となった。松尾氏は粽への解説に加えて、現在の粽が何故そのような料理法や型になったのか歴史的なことを含めて詳細をもっと知るための機会としたいと話した。また上野修三相談役からは、「この前菜は現代の日本料理における前菜料理のひとつの極み」との声も寄せられた。 |
特別寄稿 「大阪料理会に望む」上野修三相談役
応妥(オーダー)料理と季正料理
大阪で始まった「お好み料理」(一品料理)は「会席料理」の統一性に飽きた商人が始めた気ままな世界であると共に、アラカルト(一品料理)はまた大阪料理スタイルの大きな特徴でもある。
調理場の見える席に座って自分好みを伝えて料理を作らせる。味本位の一品であり、一品を求める食べ手の味覚レベルそのものが調理人の腕を磨かせてきたのである。
現代では、客の要望に応じた一品料理(アラカルト)を行う店が少なくなったが、それであるならば、料り手から食べ手を魅了する一品料理を創り、逆に食べ手を育てオーダーしてもらえるように努めたいものである。
日本料理とは季節感を重んじ、出来る限り獣肉食はさけ、新鮮な魚介・野菜・海藻を用い、先ず生食・煮物・焼物(時には揚物)と適宜なる調理技を以て完結させる。それが日本の気候風土の中で育った日本料理の在り方である。 特に会席料理は俳諧の席の後の飲茶・飲食に始まり大阪料亭によって広まって後、あらゆる会合の席の飲食や宴の席の料理の意味で「会席料理」となったのだが、現代では会合など人が寄り合う席が少なく小形の飲食店が増えて少人数の飲食が主となったので「会席」とは言い難いことから「季正(きしょう)料理」と改名することを提案する。
最後に、美しい日本の精神を育てた先人の心。そして古人はこれらに因んだ食事食法を創り出して来ました。今、私達和食の料り手(料理人)は日本の心・大和魂を伝承する義務があります。この意義ある一皿・一鉢を貴方流に創造して料理に加えて戴きたく提案する次第です。